脳卒中について
脳卒中について
脳卒中は日本人の三大死因の一つであり、その予備軍といわれている生活習慣病の増加とともに発症率も増えつつあり注意すべき病気です。逆にいうと、脳卒中予備軍にあてはまる方はしっかり治療していくことで、将来の脳卒中発症を予防できることが期待できます。脳卒中とは「脳血管障害」のことで、脳の血管が破れる「脳出血」と、脳の血管が詰まってしまう「脳梗塞」に大別されます。さらに脳出血には「脳内出血」と「くも膜下出血」に別けられ、脳梗塞は「アテローム血栓症」と「ラクナ梗塞」、「心原性塞栓症」に別けられています。ひとたび脳卒中にかかってしまうと最悪、命の危険にさらされたり寝たきりになってしまいかねません。そこまでいかなくても、それまで築いてきた社会的地位を失ってしまったり、日常生活にかなりの支障をきたすこともあります。しかもそれが一生続くのです。また、多くの場合ご家族も巻き込んでしまうのが現実です。よって、脳卒中にかからないように予防することが何より大切なのです。いや、脳卒中は予防できる病気であると強く認識してください。
これらがおこってもしばらくしておさまったので大丈夫、と考えるのは危険です。というのも、これにあてはまる方は「一過性脳虚血発作(TIA)」である可能性が極めて高いのです。最近の報告では、このTIA患者の15~20%が3か月以内に(しかもその半数は48時間以内に)脳梗塞を発症するといわれています。したがって、TIAは脳梗塞の前触れを示すものです(警告発作です)。
脳出血とは、脳の細い血管が裂けて、脳の組織の中に直接出血することです。前触れ症状はほとんどなく、ある日突然に起こります。出血した血液は血腫という塊をつくり、これによって直接的に脳細胞を破壊したり、周囲の脳組織を圧迫したりして、様々な脳の働きを障害します。多くは高血圧が原因で起こり、出血する部位によって症状は異なります。
などが挙げられます。
厳格な血圧コントロールと出血しにくくするお薬(止血剤と言います)の投与を行います。また、早期にリハビリテーション療法を開始し麻痺の改善を図ります。
脳は外側から硬膜、くも膜、軟膜で覆われており、くも膜と軟膜のすき間はくも膜下腔と呼ばれています。このくも膜下腔に出血を起こした状態がくも膜下出血です。原因としては脳動脈の一部がふくらんでできた動脈瘤(どうみゃくりゅう)の破裂によるものが大部分です。男性より女性に多く、40歳以降に多くみられ、年齢とともに増加します。家系内に動脈瘤やくも膜下出血の方がいるときは発生頻度が高く、また高血圧、喫煙、過度の飲酒は動脈瘤破裂の可能性を数倍高くするという報告もあります。
などが挙げられます。
破裂した脳動脈瘤の緊急手術が必要です。手術方法は開頭クリッピング術と脳血管内手術(コイル塞栓術)があり、病態によってどちらかを選択します。最近では後者が選択されるケースが多くなっています。
脳梗塞とは脳の血管が何らかの原因で狭窄(狭くなる)、閉塞(つまる)になるとその先にある脳細胞に血液が充分に行き渡らなくなり、脳が壊死してしまう病気です。死んでしまった脳が手足の動きに重要な場所であれば手足の麻痺になりますし、言語に重要な場所であれば言語障害が出るのです。また、病態によってラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞、心原性脳塞栓症の3つの病型に分けられています。ラクナ梗塞は脳血栓症で、細い血管の動脈硬化による物です。太い血管の動脈硬化によるものはアテローム血栓性脳梗塞と言います。心原性脳塞栓症は、不整脈や心疾患が原因で心臓内に生じた血栓などが血流にのって脳に到達し、脳動脈が詰まって起こります。3つの病型のなかでは最も急激に症状が現れ、重症であることが多いとされています。
などが挙げられます。
早期の脳卒中治療薬の点滴療法に加え、早期リハビリテーション療法が必要です。血栓を作りにくくする薬(抗血小板薬)を内服します。
脳卒中治療薬の点滴療法、リハビリテーション療法に加え、血管を拡張させる手術(ステント留置術、内膜剥離術)が必要になることがあります。血栓を作りにくくする薬(抗血小板薬)を内服します。
命の危険性がある脳梗塞で発症時間によっては超急性期血栓溶解療法(t-PAと医療従事者は言います)や経皮的脳血栓回収療法が適応となります。また他の脳梗塞と同じように脳卒中治療薬の点滴療法、リハビリテーション療法が必要です。血栓を作りにくくする薬(抗凝固薬)を内服します。
下記に当てはまる方は脳卒中にかかりやすい、脳卒中予備軍です。
これらにあてはまる方は多いと思います。これらのうち特に糖尿病や高コレステロール血症、肥満といったものは最近日本で増えています。この理由として、食生活の欧米化や自家用車の普及による運動不足など生活習慣の変化が影響しているようです。普段からの健康チェックと生活習慣の見直し、学校や会社の健康診断は欠かさず受けてください。心配なのは主婦の方です。「自分は昔から低血圧だから」と信じていませんか。もし、健康診断で上記を指摘されるようなら、一度脳や脳血管、頸動脈の精密検査を受診されることをお勧めします。また、40歳以上であれば一度はご自分の頭の中の状態をみておくことも大切だと思います。とくに主婦の方にはお勧めします。