頭痛の対処・治療・予防法
頭痛の対処・治療・予防法
日本では「頭痛持ち」が4人に1人いるとされています。現在の日本社会の状況によって、一人ひとりの生活習慣が乱れていることが原因だと考えられています。頭痛の原因は解明されていないものも多くありますが、強く疑われているのが生活習慣の乱れなのです。悪い生活習慣が元となって引き起こされるのは、頭痛だけではありません。規則正しい生活を送れない状況は、身体に大きな悪影響を及ぼすものです。健康的な身体の基礎となるとも言える生活習慣を正すことは、頭痛を改善することにも繋がります。今回は、頭痛を改善するために今日から身につけるべき生活習慣をご紹介しましょう。
頭痛の原因は詳しく分かっていないことが多いですが、それぞれの頭痛で疑われている共通の原因があります。その頭痛の原因とは、生活習慣の乱れからくる「ストレス」です。そして、もっと根本的なところで自律神経が乱れていることが、頭痛の原因だと考えられています。片頭痛や群発頭痛の直接的な引き金となるのは、頭蓋内の血管が拡張して神経を刺激することだと考えられています。また、緊張型頭痛は、肩や首などの筋肉のコリによって血行が阻害されることで、筋肉内の乳酸が溜まり、神経を刺激することで引き起こされるという見解がなされています。このような頭痛を引き起こす血流の障害は、ストレスやそれによって乱れた自律神経が引き起こすものです。自律神経とは、身体を活発にする交感神経と身体をリラックスさせる副交感神経の2つの神経から成り立っています。いわば、身体全体の調子を整える、基礎的な神経と言えるでしょう。基礎がしっかりしていない家は弱い地震で倒壊してしまうように、自律神経の乱れは頭痛を始めとする様々な病気・症状を引き起こします。
本来であれば、交感神経と副交感神経はバランスよくコントロールされているものですが、ストレスが常にかかっていると交感神経が働きっぱなしになり、自律神経も乱れてしまいます。頭痛を改善して本来の健康な身体を取り戻すためには、副交感神経に働いてもらわなければなりません。頭痛改善のための生活習慣とは、副交感神経が働くようなリラックスできる状況を作り出すことです。ここでは、今日からでも少しずつ身につけていける生活習慣を2つご紹介します。
軽い運動やストレッチは、頭痛を改善する方法としては最適です。身体的なストレスと精神的なストレスの両方に対して、とても高い効果を発揮するからです。
身体的なストレスとしては、身体の疲れや筋肉の緊張(肩こりなど)が挙げられます。軽めの運動やストレッチを行うと、筋肉は動かされて柔軟さを増していきます。身体の固さが解消されることで、疲れがとれて肩こりも大幅に軽減します。また、運動によって脳内に酸素が運ばれることで、気持ちが前向きになるとされています。筋肉の緊張もほぐれて脳内の血行も良くなり、頭が正常に働く感覚を味わえることでしょう。特に、息切れの起こらない範囲で行うような有酸素運動が、自律神経を整えるには効果的です。
良質な睡眠をとることも頭痛の改善には大切です。片頭痛を誘発する原因として睡眠不足が挙げられることからも、頭痛と睡眠の関係の深さが伺えることでしょう。睡眠は身体のリズムをととのえ、自律神経のバランスを正常にします。睡眠中は副交感神経が活発に働くことが分かっています。日中はどうしても交感神経が働く分、しっかりと睡眠をとることでバランスが保たれるのです。
頭痛改善のために良質な睡眠をとるには、まず寝る前にリラックスタイムを作ると良いでしょう。寝る1時間前にはパソコンやスマホ画像を見ないようにします。部屋の照明を暗くして、落ち着いた音楽をかけたり、お香をたいたりすると、スムーズに眠りにつきやすいです。入眠前には、明るい光や大きな音といった刺激を避けることがベストだと言われています。生活習慣を整えるスタートとして、まずは、軽い運動もしくはストレッチと、睡眠前のリラックスタイムを確保することから初めてみてください。生活習慣を急激に変えることは難しいと思うので、忙しい方は1日10分間でも構いません。継続することがなによりも大切です。無理のない範囲でこの2つの生活習慣を続けることで、1か月後には少なからず頭痛は改善されていることでしょう。1か月継続できれば、生活習慣は身につくとされています。まずは1か月を目途に継続してみましょう。
頭痛ダイアリーをご存知でしょうか。あまり一般的ではないかもしれませんが、頭痛治療に積極的に取り組む医師や患者にとって、頭痛ダイアリーは必須なものです。頭痛ダイアリーは頭痛関連の病院で使われていますが、通院していない方であっても活用できるものです。それでは、頭痛ダイアリーとは、頭痛改善のためにどのように役立つのでしょうか。今回は、頭痛ダイアリーについて解説していきます。
頭痛ダイアリーは、主に頭痛を専門的に治療している病院や、頭痛関連の研究などで使われています。頭痛にはたくさんの種類があり、それぞれ原因や特徴、痛みの出方や強さなどが異なります。また、症状には個人差も大きく、一人ひとりに合わせた治療が求められています。日本人の4人に1人は頭痛持ちだと言われ、身近なものとして感じている方も少なくないことでしょう。しかし、一般的な症状であるが故に、頭痛の症状に意識を向けることはあまりないのではないでしょうか。痛みが出ても、特に症状を気にすることなく過ごしてしまいがちです。そのため、自分の頭痛の症状について、ちゃんと自覚できていない方が実はとても多いのです。頭痛ダイアリーは、頭痛の症状をしっかりと認識するためのものです。症状を自覚することで、「自分はどの種類の頭痛なのか」「どのような治療を受けるべきなのか」が分かります。
頭痛ダイアリーの目的をひとことで表すと、「頭痛の症状を明確にすること」です。それによって、様々なメリットが出てきます。
この2つのメリットによって、医師が適切な診断をすることができ、効果的な治療に繋がります。つまり、頭痛ダイアリーを記録し、医師と患者が共通の視点に立つことで、今後の頭痛改善へのスピードも大きく変わってくるのです。
頭痛を治したいと願っている方にとって、頭痛ダイアリーはとても重要なものです。具体的に頭痛ダイアリーでは大きく「頭痛そのものの症状について」と「頭痛にともなう症状」、「薬の使用状況およびその効果」の3項目に分けて記載します。
頭痛ダイアリーでは、まず頭痛そのものの症状を詳しく記載していきます。どのようなタイミングで、どの部位が、どの程度痛むのか、といったように、細かい症状の項目があり、それにご自身の頭痛を当てはめていきます。
例えば、片頭痛には頭の片側にズキズキするような痛みが出る、といったような特徴的な症状があります。一方で緊張型頭痛では、鈍い痛みが頭全体に出るという症状が現われます。頭痛ダイアリーの記載内容を参考にしながら問診を進めることで、頭痛の診断の正確性が高くなるのです。
頭痛の種類によっては、痛みにともなう特徴的な症状がみられます。頭痛ダイアリーでは、頭痛そのものの症状とともに、その周辺の症状についても記載します。
典型的な片頭痛は閃輝暗点のような前兆をともないます。群発頭痛では、しばしば飲酒後に痛みが現われるケースがあります。頭痛にともなう症状を記載しておくことで、診断のための重要なヒントを見つけることができます。
どんな薬(市販薬、トリプタン系薬剤など)を何錠使い、その効果はどうだったかを記載します。これにより薬が頭痛に合ったものなのかどうかがわかります。また、内服のタイミングが良いのかや、薬の使い過ぎはないかも判断できます。
頭痛体操をご存知でしょうか。頭痛体操は、頭痛を改善するための方法のなかでも、一番簡単でお手軽にできるものです。驚くべきことに、頭痛体操を毎日2分間行うだけで効果が見込めます。今回は、頭痛体操のやり方をご紹介します。
頭痛体操は今すぐ取り組める手軽さから、頭痛持ちの方におすすめできる改善方法です。「忙しくて時間がとれない」「薬を飲むのは避けたい」と思う頭痛持ちの方に、ぜひ試していただきたい体操です。数ある頭痛のなかでも、頭痛体操で特に効果が見込めるのは、「緊張型頭痛」です。緊張型頭痛の一番の原因となるのが、ストレスです。ストレスが心や身体に溜まることで、身体は固くなってしまいます。そして当然のことながら、首や肩・背中の筋肉も強張って緊張してしまいます。血行の悪くなった首や肩などの筋肉には乳酸が溜まってしまい、それが神経を刺激することで、緊張型頭痛が引き起こされるのです。つまり、首や肩の筋肉をほぐして血行を良くすることができれば、緊張型頭痛は改善されます。頭痛体操の目的は、首や肩の筋肉をほぐすことなのです。頭痛体操には、緊張型頭痛の原因となる肩こりや首のハリを根本的に改善し、予防する効果があります。さらに、頭痛体操の「血行を整える」という効果は、片頭痛の予防にとっても良いと言われています。片頭痛の原因ははっきりと解明されていないものの、頭蓋内の血管の拡張が疑われています。血行を整えて過剰な血管の拡張・収縮を抑えることができれば、片頭痛の発作が起こる頻度も少なくなることでしょう。
側頭筋は元々は咀嚼筋と言われ、ものを噛むための筋肉です(口を開けたり閉めたりすると動くのを触れます)。しかし、悪い姿勢が続いたり首の筋肉が緊張していたりすると、それにともなって強張ってしまいます。後頸筋群や僧帽筋も悪い姿勢や背中などの周囲の筋肉の緊張に合わせて固くなります。頭の重さは約5㎏ありますが、猫背など悪い姿勢で頭の位置が肩より前方に出ると、後頸筋群や僧帽筋が頭を支えようと緊張します。
頭痛体操はとてもシンプルなやり方で、効果的に全身の筋肉をほぐすことができます。頭痛体操のやり方は、大きく3ステップに分けられます。
以上が頭痛体操のやり方の3ステップです。この後は、身体をゆっくり左右にねじる動作を2分ほど続けるだけです。思っていたよりも簡単だ、と感じた方も少なくないことでしょう。頭痛体操を行う際に気を付けて欲しいのが、良い姿勢を保つことです。あごをしっかりと引き、頭の位置が肩より前方に出ないように意識しましょう。せっかくの頭痛体操も、姿勢が崩れると効果が減ってしまいます。頭痛体操は、ゆっくり大きく行うことが大切です。ゆったりとした上半身のねじり動作が、肩や首の筋肉を始め、全身の筋肉をリラックスさせることに繋がります。
頭痛体操は、緊張型頭痛の改善だけでなく片頭痛の予防も期待できます。しかし、一つだけ気を付けていただきたいポイントがあります。それは、片頭痛が出ている時は頭痛体操を控えることです。片頭痛の特徴として、動作で痛みが強くなるといったことが挙げられます。もし片頭痛持ちの予防方法として頭痛体操に取り組まれる場合は、片頭痛の症状が出ていないタイミングで行いましょう。
頭痛には様々な種類があるように、処方される薬も頭痛によって違います。つい市販薬でやり過ごしてしまいがちな頭痛ですが、病院で処方される薬によって頭痛が劇的に良くなるケースもあります。今回は、頭痛に悩む方が知っておくべく、頭痛の薬物治療について見ていきましょう。
慢性頭痛とは、片頭痛や緊張型頭痛、群発頭痛を指します。日本人の4人に1人は頭痛で悩まされていると言われており、その方たちの多くはこの3つの頭痛のどれかに当てはまります。慢性頭痛は一般的な頭痛であるため、市販薬を飲んだり痛みが引くのを待ってやり過ごしたりする方もいます。ここでは、そのなかでも比較的重度であり、病院で薬物治療を受けている方がどのような薬を使っているかをご説明します。片頭痛や緊張型頭痛、群発頭痛は痛みが起こるメカニズムや原因がそれぞれ違います。そのため、当然のことながら使用する薬も頭痛の種類によって変わります。
片頭痛が引き起こされるメカニズムとは、なんらかの原因で頭蓋内の血管が拡張されてその周囲が炎症を起こし、血管周囲の三叉神経を刺激するというものです。三叉神経は顔面の感覚をつかさどっているので、三叉神経が刺激されることでその興奮が脳に伝えられて頭痛が起こります。
頓挫薬とは、片頭痛の発作が起こったタイミングで服用します。この薬を服用することで、痛みを和らげることができます。頓挫薬としてよく使われるのが、トリプタン系薬剤と呼ばれるものです。トリプタン系薬剤は、拡張している血管を収縮させたり、三叉神経が出す痛みの元となる物質をブロックしたり、炎症を抑えたりと、片頭痛で起こる痛みの元に直接働きかけます。最近ではトリプタン系薬剤が使用できない片頭痛の方(脳梗塞や狭心症などの既往)にも用いることのできるラスミジタンという製剤も使えるようになりました。
予防薬とは、頓挫薬で対処しきれないような重度の片頭痛の方に処方されます。予防薬は、片頭痛そのものが起こらないようにするための薬です。予防薬として、主に抗てんかん薬(バルプロ酸ナトリウム)やベータ遮断薬(プロプラノロール)、抗うつ薬(アミトリプチリン)が使われることが多いです。抗てんかん薬(バルプロ酸ナトリウム)は神経細胞の興奮性を抑制することで予防効果を示します。ベータ遮断薬(プロプラノロール)も片頭痛予防効果は確実とされています。ただし喘息や心不全のある方には使えません。また、抗うつ薬(アミトリプチリン)は片頭痛に関係の深いセロトニンのコントロールができるため、片頭痛の予防に有用です。また最近は片頭痛の元になる痛み物質(CGRP)を直接ブロックするCGRP関連抗体薬が使えるようになり、予防効果がこれまでより格段に向上しています。ただしこのCGRP関連抗体薬は注射薬で1か月に1回注射しなければなりません。
緊張型頭痛は、片頭痛や群発頭痛と比べても痛みの程度は軽いケースが多く、通院をしている方の割合は低いようです。逆に言えば、通院をするような方は、緊張型頭痛が重症化しているとも言えます。緊張型頭痛の原因は、身体的ストレスと精神的ストレス、悪い姿勢などによって引き起こされる筋肉の緊張です。そのため、凝り固まった筋肉を緩めることや、精神面の改善を目指します。急性期治療は鎮痛薬による薬物治療を中心に行いますが、どうしても何度も服用したり、長期に服用してしまいがちで、1週間に2~3日以上は使用しないように注意が必要です。
重度の緊張型頭痛が引き起こされるほどの精神的ストレスを抱えている方に対しては、向精神薬の一種である抗うつ剤を処方します。気分が晴れない状態が続いていたり、さらに進行してうつ病となっているような方は、投薬治療から精神状態を改善することで、緊張型頭痛を治していきます。そして、身体的ストレスや悪い姿勢を長期間続けている方は、首や肩、背中などの筋肉がとても固くなっており、それが原因で頭痛が起こります。固まった筋肉は、運動やストレッチ、マッサージなどで改善を図りますが、あまりにも緊張が高くなっている場合は、一時的に筋弛緩薬を処方するケースもあります。また鍼灸が有効な場合もあります。
群発頭痛は、片頭痛や緊張型頭痛と比べても痛みの程度が圧倒的に強いことがほとんどです。しかも、群発頭痛が起こるメカニズムや原因は解明されていません。そのため、群発頭痛では痛みを少しでも緩和することを目的とした薬が処方されます。
群発頭痛の発作時の痛みに対しては、頓挫薬としてイミグラン皮下注射やイミグラン点鼻薬を用います。この頓挫薬は、先ほどご説明した片頭痛の薬と同じものです。片頭痛のための薬ですが、この薬の持つ血管の収縮や炎症を抑える効果が、群発頭痛に対しても良い影響を与えるようです。
予防薬:群発頭痛発作(群発期)の予防療法として有効なものは少ないです。それでもカルシウム拮抗薬(ベラパミル)や副腎皮質ホルモン剤を用いることがあります。群発頭痛発作には純酸素吸入も有効です。100%酸素を15分間吸入します。
頭痛の症状や痛みが比較的軽度であれば、特に受診や通院などをせず、市販の鎮痛薬で対処することもあるでしょう。確かに市販薬は薬局でいつでも手に入れられる気軽さがあり、急な頭痛を和らげるためには良いかもしれません。しかし、市販薬を長期的に続けて服用していると、薬への耐性ができて効きにくくなります。そして、長期の服用は身体にとても大きな負担がかかります。さらにもっと恐ろしいのは、薬の使い過ぎによる頭痛(薬物乱用頭痛)に移行してしまうことです。本来頭痛を治すための薬で逆に頭痛を起こしてしまうのです。こうなると頭痛はこじれてしまいなかなか治すのは難しくなります。頭痛もちで月に15日以上頭痛があり、そのために薬を飲みすぎてしまう状態を3か月以上続けると、これを発症することがあります。いずれにしても市販薬を毎日のように飲まなければならないほどの頭痛であれば、いちど受診して医師の判断を仰ぐようにしましょう。