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医療コラム

頭痛薬(鎮痛薬)の飲みすぎに注意! - 薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛 Medication Overuse Headache: MOH)-|つぐ脳神経外科・頭痛クリニック|厚木市の脳神経外科|即日MRI検査|駐車場あり

頭痛薬(鎮痛薬)の飲みすぎに注意! - 薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛 Medication Overuse Headache: MOH)-

頭痛に対して頭痛薬(鎮痛薬)を飲むことは当然のことでしょうが、飲みすぎてしまうとかえって頭痛を治りにくくしてしまうことを知ってますか? 言い換えると「頭痛に対する治療薬で頭痛を起こしてしまう」という何とも皮肉なことです。このような頭痛を「薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛 Medication Overuse Headache: MOH)」として国際頭痛分類のなかでも明記されています。

世界中では約6000万人がこのMOHに罹患しているとされ、慢性頭痛患者の25~50%を占めるとの報告もあります。実際私のような頭痛クリニックには多くのMOHに罹患している患者が来院されます。

MOH発症のきっかけとして、一つは患者が頭痛に対して安易に市販薬(鎮痛薬)で対応していることが挙げられます。残念ながらいまだに日本国内では「頭痛ごときで会社や学校を休むなんて、仕事ができない・家事ができないなんて」という社会的風潮が根強いのは事実です。そのこともあってどうしても市販薬に頼ってしまいがちになり、それが高じてしまうと「今日は大切なことがあるから休めない」などという理由から予防的に頭痛薬(鎮痛薬)を飲んでいたり、「なんとなく頭痛になりそうだから」とついつい頭痛薬(鎮痛薬)を飲んでしまっていることも多いです。実際受診されたMOHの患者の多くがこのようなことからMOHを発症しています。また「薬の飲み方を守っているから大丈夫(1日3回のところを1回にしてがまんしている、1回2錠のところを1錠に減らして飲んでいる)」という発言も多く聞かれます。しかしたとえ薬の飲み方を守っていてもMOHを発症することはあります(後述)。

MOH発症のきっかけとしてもう一つは、頭痛患者に画像検査などで異常がないので安易に鎮痛薬を処方し、しかも漫然と処方継続していたり、頭痛発作回数が多いにもかかわらず頭痛予防治療をせず頭痛頓挫薬のみで対応していたりと、医療者側のMOHに対する認識の甘さが原因のこともあります。実はこちらの方が問題で、患者にしてみると「医者にかかってみてもらっているから大丈夫」、「医者の指導通りに薬を内服している」と考えており、いわゆるこじれたMOHになっていることが多いです。同業者としてもっとこのMOHに関して啓蒙していかなければなりませんが、患者の方でも「なんとなく頭痛薬(鎮痛薬)を飲みすぎているのでは」と疑問に感じたら頭痛専門医にご相談していただいた方がよいと思います。

MOHの診断は「もともと慢性頭痛を持つ患者(いわゆる頭痛もち)が1か月に15日以上頭痛があり、3か月を超えて頭痛薬(鎮痛薬)を定期的に月に10日ないしは15日以上使用している場合」に当てはまれば診断されます。服薬日数に差があるのは内服薬の種類によります。しかし一般的に1種類の頭痛薬(鎮痛薬)を月に15日以上飲んでいるようならMOHに至る危険性が高いと判断した方がよいでしょう。現在飲んでいる頭痛薬のパッケージや説明書を見ると、その成分表示には無水カフェイン(血管収縮作用をもつ)やアリルイソプロピルアセチル尿素(鎮静作用をもつ)が含まれていることもあり、実はこれらが頭痛薬(鎮痛薬)の飲みすぎ(習慣性)にかかわることもあります。

MOHのもとになる頭痛の多くは片頭痛です。片頭痛はどうしてもその頭痛の程度から生活に支障をきたしやすい頭痛です。そのため前述のように頭痛薬(鎮痛薬)の必要度が高く、そして片頭痛発作により失敗したいやな経験(会社や学校を休み仕事に穴をあけた・試験が受けられなかった、気持ちが悪く一日中寝込んでしまったなど)が記憶され早め早めに頭痛薬(鎮痛薬)を飲むことが多いからです。MOHを引き起こす要因としてこれら頭痛薬(鎮痛薬)に対する依存傾向や頭痛に対する恐怖や不安といった心理的要因のみならず、最近の研究では脳の機能的・器質的変化が関与しているとも考えられています。

MOHの治療は、

①患者にMOHに対する知識を教育することです。とくにどうしてMOHに至ったのかを見極め医者と患者が共通認識することが重要です。

②原因となった頭痛薬(鎮痛薬)の中止です。これについては多くのMOHの患者は抵抗されます。これまで習慣となっていた服用を突然やめてがまんさせるので、それはそれは苦しさを伴います。しかしそれを乗り越えると必ず改善していきます。ただ頭痛薬(鎮痛薬)を中止させるだけではなく、頭痛予防薬を併用することがほとんどです。これまでの患者をみると薬を中止して1週間が過ぎると多くの患者は改善してきます。それらを把握すべく頭痛ダイアリーを記載させ、患者自身にも治療効果についてフィードバックさせるようにしています。

MOHは治療が難しい頭痛の代表です。さらにいったん克服しても経過観察中に半数近くが再発したという報告もあります。よってもっとも重要なのはMOHの発症を防ぐことです。前述しましたが、「なんとなく頭痛薬(鎮痛薬)を飲みすぎているのでは」と疑問に感じたら今すぐに頭痛専門医にご相談していただいた方がよいと思います。