院長の体験した閃輝暗点|つぐ脳神経外科・頭痛クリニック|厚木市の脳神経外科|即日MRI検査|駐車場あり

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医療コラム

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院長の体験した閃輝暗点

2017年6月のとある午前中の診察中にそれは静かに始まった。

まず視野の中央やや下に最初に小さな時計みたいなopen ringが出てきてその縁はギザギザした黒色。約40~50㎝前にあるPCモニター画面の文字が読みにくかった。目の動きとともにそれも移動。そしてその時計みたいなものは小刻みに回転する感じだった。さらにその文字盤に当たるところはちょうど映画の「プレデター」の地球外生命体が身を隠すときにみられたような、透明でモザイクがかった感じでその向こうの文字や背景は見えない。目の動きとともにそれもついてくるため、いつものようにキーボードでの文字入力がはかどらない。そうこうするうちにそれは徐々に大きくなり、そして視野左外側に稲光マークのようにキラッと光るような形になった。その時視野の大部分は普通に見えている。目を閉じてもキラキラ感は残像していた。おおよそ15~25分ぐらいで気づけば消えていた。

最初はいつもの飛蚊症なのかと思ったが、どうもそれとは様相が異なる。その時ふと「これって閃輝暗点?」と頭をよぎった。それからはひょっとしてこれが消えていくや否や強烈な頭痛に襲われるのでは、とどんどん恐怖感が芽生え、申し訳ないが冷静さを装いながら患者さんの話に耳を傾けているものの正直上の空のところもあった。ただし必死になって患者さんの方に集中すれば、視野の一部で繰り広げられている現象は何とか無視できる感じだった。それほど視野の大半は正常に見えていたからである。

それでも視野左外側に移動してギザギザ模様のキラキラ光る形に変化してくると、気持ちが少し焦ってきてしばらく椅子に座って安静にしていた。そしてトイレで小用をたして戻ってきたときにはすべては終わっており、あとは頭痛がいつ来るかと戦々恐々としていた。ただそれはいつになっても来ることはなかった。私は頭痛もちでもなくこれが初めての経験なので、いわゆる「閃輝暗点のみで頭痛を伴わない場合」にあたるのだと認識し、今度は一過性脳虚血発作などの脳虚血性病変に怯えることになるのだった。結局次の患者さんもまたその次もといった感じで午前の診療は予定より50分遅れで終了した。頭痛はもちろん体調には変化はなかったが、すぐにMRI検査するかどうか迷ったもののそのままになってしまった。

確かに自分で閃輝暗点を体験すると、これまで多くの患者さんが訴えていたように初めは何が起こったのかわからず混乱し、それが徐々に大きくなって見えにくくなってしまうと非常に恐怖感を味わうことが理解できた。突然なんの前ぶれなく出現するといったことも恐怖感をあおってしまう。さらに自分はそのあとに生じるであろうひどい片頭痛発作も頭をよぎったのでなおさらである。閃輝暗点という得体のしれない一時的な視覚異常の後に、吐き気を伴うような頭痛発作に襲われれば、次からはこの現象に怯えるのは理解できる。いずれにせよ貴重な経験ができたと思う。